私が数年だけ住んだヨーロッパの小さな国、スイス。
スイスといえば、時計、チョコレート、アルプスの山々、そして何と言ってもチーズである。
スイスを代表する料理、それがチーズフォンデュ。
さて、今日は待ちに待った初めてのチーズフォンデュディナー。
お気に入りのカシミヤのセーター出してきちゃった私はかわいそうな人。
だってチーズフォンデュってすんごく臭いんだから。
レストランに到着。
え、この匂い。これがチーズフォンデュの匂い、いや、臭いなの?
フォンデュバージンの私はビックリ。
スイス人にどつかれる覚悟で表現するならば、3日間の山歩きで履き続けた靴下の臭い。
※あくまでも一個人の感想です。てか山歩き後の靴下の匂いとかたとえが既にスイス風かよ。
でも私がその臭い以上にびっくりしたのはそのルール。
つまりチーズフォンデュっていろんなものを溶けたチーズにつけて食べるんでしょ⁈
そう思っているそこのあなた、残念ながら、心から残念ながら不正解。
ルール1
チーズの海に泳がせていいものはただ一つ。
パン。
以上。
たまにラクレットよろしくジャガイモと食べる人もいるらしいが、基本はパンのみ。
ルール2
チーズにパンを入れたら8の字(地域によって諸説あり?)を描きつつこれでもかとチーズをパンにまとわりつかせる。
ルール3
フォークでチーズの中をグルグルしてる途中でパンをチーズの中に落としてしまった人はワインのボトルを1本奢る。
ルール4
水は飲まない。
おススメの飲み物は白ワインか暖かいお茶。
冷たい水を飲むとお腹の中でチーズが固まって後ほど腹痛に襲われるぞと脅させる。
※スイスのあるフランス語圏出身者のルール。フォンデュ本場のフリブール州ではございませんので悪しからず。
さて、いっただっきまーす!
パンにトロトロのチーズをたーっぷり。あぁ美味しい!はい、また同じようにするのね。
じゃあパンにチーズつけてぇ。
美味しいね。
じゃあ次は…
もういっちょパンにチーズつけちゃうぞ!
てのをチーズがなくなるまでひたすら繰り返す。
私はパン➕チーズ3回目で手が止まり、周りのフォークを牽制しながらタイミングを見計らってパンをダイブさせ続けるスイス人たちをぼんやり眺めていた。白ワインのせいか、レストランに充満する強烈なチーズ臭のせいか、同じことの繰り返しに飽きたせいか、とりあえずぼんやりだ。
となりの同じく今日がフォンデュデビューの日本人男性はボヤき始める。
肉ないのー?肉!にく!NIKU!! もう額に肉の字が浮かび上がっている。
そんな我々日本勢も、鍋が空になるころにはスイス人たちをもはや羨望の眼差しで見つめていた。
まだ食べ続けている。ただひたすらパンとチーズだけを。
最後にガリガリに鍋にこびりついたチーズを剥がしてみんなで分け合い(奪い合い)ながら食べる。
スイス人のチーズ欲、恐るべし。
あ、胡椒とピクルスも食べていいよ!
スイス人が日本のチーズフォンデュの 写真をレストランなどで見ると、決まって大喜びで写真を撮る。
父さん、日本人はフォンデュにソーセージやらブロッコリーやら入れちゃうんだぜ?ウケるだろう?
むー!
食に多様性を求めず、基本的にパンとイモとチーズ、そしてちょっとの野菜で大喜びのスイス人。
どんなに何種類もの違ったタイプのチーズが食卓に並ぶとはいえ、私にとってチーズはチーズ。
主人の実家に数週間お世話になったことがあるが、週に3日は夕食がチーズとサラダとパンだったとき、私は結婚する人の国を間違えたと思った。