アルプスから高尾山

国際結婚しスイスに5年住んで帰国した主婦が日本とスイスのギャップに弄ばれる

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日曜日に思いっきり掃除機かけていいの⁈ 日本のここが素晴らしい①

スイスに引っ越して初めてアパートを借りたときのお話。

 

噴水がある小さいけれど雰囲気の良い広場に面した建物の3階にある部屋を借りた。

そこに決めた理由はそこしか無かったから。

スイスでアパートを探すのは容易ではないが、たまたま旦那の友人が国外に引っ越すことになったため、そのアパートに入れることになった。

偶然引っ越すタイミングもよくとてもラッキーである。

 

 

多少建物の古さは気になるが立地が良いので私たちは気に入った。

しかしその友人は、1つ下の階に1人で住む年配の女性がくせ者なので気をつけてと忠告した。

話を聞くと生活音に対して文句を言われたことがあるとのこと。

私たち夫婦は酒は飲むが夜な夜な家でパーティーする生活を送ることもないし、爆音で音楽を聴くのも10年前に辞めたし、老夫婦さながらの生活を送っていくつもりだったので、当時は独身パリピな彼の忠告を軽く聞き流していた。

 

私たちは大丈夫と。

 

 

 

しかし大丈夫ではなかった。

引っ越したあとに家族や多少の友人を招いて慎ましやかに開催されたハウスウォーミングパーティーで事件は起こった。

 

 

 

「ドンドンドンドンドン」

 

 

けたたましい音と振動が下から響いた。

咄嗟に友人のしていた話が耳元に蘇る。

いや、でもまだ午後3時だし外も明るい。

そして私たちのアパートには十数人の家族や友人がいて、それぞれが会話はしていたが音楽も聞いていないし大声を張り上げている人は誰一人いなかった。

 

 

みんなちょっと気になった。

スイスでは夜の10時から朝6時の間は騒音を立ててはいけないと法律で定められていると旦那が言う。

従ってこんな真昼間に話し声がうるさいからと非難されることはないだろうと旦那の両親や親戚たちが言う。

 

まぁ私たちに対するものではないかもしれないし気にしないことにしよう。

 

 

 

30分後、また下から同じ音がする。

旦那の母親や親戚たちは「ちょっとおかしいわよね。」とザワつく。

 

 

 

 

これが悲劇の幕開けだった。

 

 

 

 

その後の約1ヶ月間、下の住人はたびたびデッキブラシか何か知らないが長い棒のようなもので下から天井、つまり私たちの部屋の床を突き続けた。

 

ある日、読んでいた本を落とした。

 

ドンドンドンドンドン。

 

 

 

ある日、午後8時ごろに食器を割ってしまったので掃除機をかけた。

 

ドンドンドンドンドン。

 

 

 

ある日、ヒールのある靴で忘れ物を取りに部屋へ戻った。

 

ドンドンドンドンドン。

 

 

 

夏のある日、私たちの上の階の住人が窓を開けてパーティーをしていた。

 

ドンドンドンドンドン。

 

 

 

もう気が狂いそうだった。

引っ越してきたばかりでスイスが嫌いになった。

 

旦那は私がこのことについて強いストレスを感じていることを告げると、彼女の頭がどうかしてるんだから気にするなと言う。

 

 

そしてその日はやってきた。

アパートのエレベーターが故障し仕方なく階段を上がって部屋に戻る途中に、2階で部屋の前で鍵を探す彼女に遭遇した。

 

 

こんなにも胸の鼓動を感じたのは初恋の竜也くんにラブレターを渡したとき以来だ。

何か言われるのかな。

自分たちは悪いことはしていないと思いつつも言葉を交わす前から怖気付く自分がいる。

見た目はショートカットで派手過ぎないが身なりには気を使っている雰囲気の60〜70歳くらいの女性。

 

 

私「ボンジュール」

 

マダム「ボンジュール、あなた最近3階に引っ越して来た方よね?」

 

私「(キターーー‼︎)はい、そうです」

 

マダム「えっとぉ。お宅で深夜に家具を動かすような音がして気になるんだけど。気をつけてくださる?」

 

私「えー、深夜に家具を動かしたことは引っ越し以来一度たりともありません」

 

マダム「あらそうなの?何か音が聞こえるわよ。

まぁいいわ。あなたスイスに住んで日が浅いのかもしれないけどもっと気をつけて生活した方がいいわよ。日曜日に掃除機はご法度よ。

あと…(3分続いた説教は以下省略)」

 

私「あ、そうなんですね。気をつけます。すいません。ご指導ありがとうございます。さようなら〜。ではまた〜。(もう2度と会いませんように〜)」

 

 

その晩、旦那にこの会話の一部始終を報告。

旦那は今どき日曜日に掃除機かけるなは無いよと言うが、つまり以前はそれが常識だった時代もあるということで、気にする年配層もいるようだ。

 

この後しばらくはスイス人に会うたび“日曜日に掃除機”に関してどう思うかを世論調査した。

同年代に聞くことが多かったためか、ほとんどの人たちは気にする必要ないと言っていたが、中にはやはり文句を言う人はいるだろうという人もいたし、夜10時以降のシャワーやトイレの水を流すのにすら文句を言う人がいるという話も耳にした。

 

 

その後また下の階の彼女と道ですれ違う事もあったが、アジア人は皆同じ顔に見えるのか特に話しかけられることはなかった。

 

 

 

そのアパートには1年半ほど住んだのち契約の関係で引っ越した。

新しいアパートには中庭があり、周りの部屋の住人の生活音が響いた。

大音量でテレビを見るのが日課の部屋、サッカーの試合があると盛り上がる部屋、警察を呼ぶべきか心配になるほど夫婦喧嘩する部屋。

日曜日に掃除機をかける音が聞こえることがあると、それなら私もと掃除機をかける。

 

 

子供2人が食べ散らかし遊び散らかす今、深夜以外はいつ何時でも掃除機がかけられる場所で生活できることはこの上なく幸せなことである。

 

そして残念なことにいつでもできると思うとなかなかやらなくなる。

スイスにいたときの方が必死に掃除機かけて部屋キレイにしてたな。

子供が散らかしまくるのをいちいち片付けているとストレスが溜まると気づいた今、それでも散らかり放題はいただけないと、片付けざるを得ない状況を作るために高尾山の麓まで隔週でお友達を招くのが悪くないと思いついた厄介者な私たち夫婦。

 

持つべきものは友達です。

メルシー!