アルプスから高尾山

国際結婚しスイスに5年住んで帰国した主婦が日本とスイスのギャップに弄ばれる

MENU

Blue Monday 朝からぎっくり そしていつものあいつ 

今日、私の頭の中では一日中New Orderの『Blue Monday』がループしていた。
私は目覚めた瞬間からブルーだった。



そして朝からぎっくり腰になった。
ぎっくり腰というと一歩も動けないような症状を想像するが、そこまでひどいものではなかった。
でも体勢を変えたときに『ぎくっ』と腰に違和感を感じ、そこが痛み続けているのでおそらく軽いぎっくり腰なのだと思う。
歩けない子供と暴れ回る子供と行動を共にすることを強いられる母親にとってこれは痛手。
痛くても長男を幼稚園に迎えに行かない訳にはいかないし、次男は置いていく訳にいかず歩けないから抱っこしなければいけない。


あっという間に迎えに行く時間になり、のろのろと準備をする。
外に出るとまだ5月だというのに真夏のような日差しが照りつける。
風があるのがまだ救いだが、これから数年ぶりに体験することになる日本の蒸し暑い夏に耐えられるのか不安になる。
まぶしい太陽の光は私に対する嫌がらせ。
ブルーな人間にとっては何だってネガティブなメタファーになるのだ。



腰が気になりいつも以上にダラダラと歩く。
歩いているとお尻のあたりに不快感を覚えた。



また君か。


妊娠と出産を経て私は痔主になった。





「◯◯ちゃんのお父さんは痔の手術を受けるんだって」

小学生のとき、そんな要らない情報がクラスで広がったことがあった。
当時の私は痔とは何なのかさえよく分かっていなかったが、きっとクラスのみんながよく分かっていなかったに違いない。
そしてきっとクラスのみんなが痔とは何か恥ずかしいことなんだろうと思っていた。


その当時は自分が痔になる日が来るなんて思っていなかった。



月日は流れ、私が25歳だったときに知り合ったフランス人がフランス語に興味を持ちはじめたばかりだった私にフランス語のフレーズを2つ教えた。
一つは「私は妊娠しています」
二つめは「私は痔持ちです」
だった。

彼はもちろんふざけてこの2つのフレーズを選んだ。
私はそんな文章は使う機会がこないだろうから覚える必要がないと思ったが、今後フランス人を笑わせるために覚えておくのもいいだろうと暗記した。

そしてそれから10年も待たずに私はこの2つの文を何度も使うことになった。



痔主になって思うが、これは何も恥ずかしいことではない。
まだ予備軍だったころは心配でインターネットでいろいろ情報を探したりしたし、スイスの病院でも産婦人科に何度も相談した。
ネットでは日本人の3人に1人が痔持ちだという情報が流れる。
スイスの産婦人科医も私の伏し目がちな告白に対し、「あ~そう」とカジュアルに返す。
妊婦が痔になるケースは非常に多いという。


もし私が小学生のときに痔主デビューしてしまっていたら死ぬほど悩んだに違いない。
そしてもういい感じに40歳が視界に入ってきている私は、やはり、痔主として生きていることに悩んでいる。

その理由は恥ずかしいからでも何でもなくて、不快だから。
まだ痛みはそんなに出ていないが時間の問題だろう。
そろそろ病院に行く段階にきているのかもしれない。


とりあえず病院の前に薬局で軟膏を買おうと思っている。
スイスでは産婦人科に処方された痔の軟膏や座薬を薬局で買っていた。
そういうときに限って対応してくれる薬局の店員が若くてかっこいいお兄さんだったりする。


「ボンジュール。私は痔主です。軟膏をください」
いや、ただ処方箋を渡せば売ってくれるのだが、どうせなら宣言させてくれ。

お兄さんが座薬の入れ方を知ってるかと尋ねてきた。
何年生きてると思うとるんじゃい。
と言いたいところだったが、スイス初座薬だし何となく入れ方を聞いてみた。

まさかの入れる向きがいつもと逆方向だった。



彼の表情に『ドヤ』の色が浮かんだように見えたのは気のせいかもしれないが、そのあと心配でネットで探してみるがそんな入れ方を推奨している人は‥‥少ないけどいた。


そんなどうでもいいスイスの薬局の思い出まで蘇るほど憂鬱な気分の私。
日本の薬局やドラッグストアで薬剤師や店員が男性だったら相手が外国人男性の場合よりちょっと恥ずかしそう。

なんでだろう。


大丈夫、彼も痔主である確率は3分の1。
もしお仲間なら私に優しく微笑みかけてくれるかも。