アルプスから高尾山

国際結婚しスイスに5年住んで帰国した主婦が日本とスイスのギャップに弄ばれる

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電車で出会った優しい人々

最近は電車に乗ると、よく人に声を掛けられる。

alpestakao.hatenablog.com


2人の子供を連れた母親。
暴れる茶髪の幼児と母親のお腹にくっついた髪の薄いキューピー似の乳児。

そして当の母親はというと、そんなに暑くもないのに暴れ回る長男のせいで変な汗をかき額はテカテカ。
かいた汗のせいで頭の周りは湿度が上がり、くせ毛は勢いを増す。
そして産後に抜け落ちた毛が一気に再生し生まれたアホ毛たちが、くせ毛をさらに持ち上げ頭は見事に巨大化している。
背中にはパンパンに膨らんだリュックサック。

こんなみすぼらしい姿が同情を買うのか、電車でよく席を譲ってもらったり、優しい声をかけていただいたりする。





今日、電車の中で会った人々。


武蔵野線

私たちは文庫本を読む40代くらいの女性とゲームする若者の間に座る。

まだ午前中だったが長男は眠くなってしまったのか駄々コネ気味。
座席の上に靴を脱いで座り、窓の方をむいたり前を向いて正座したり何度も体勢を変えるので、そのたびに長男の隣に座り本を読む女性に足がぶつかりそうになり何度も謝る。
前には同じく40代くらいの女性が立っている。
落ち着かない長男に手こずっていると、お腹の次男も暴れ始める。
泣くまではいかないが、ご機嫌斜めでギャーギャーいいはじめ、抱っこ紐から脱出せんと海老反っている。

隣の女性はもう本に集中できない様子で顔がこちらの様子を伺うような角度に何度も動くのが視界に入り、気まずく申し訳なく思うが子供たちはそれぞれ駄々をコネ続けた。

とりあえず抱っこ紐から次男が落ちるのを回避しなければ。
暑がって暴れているのかもと思い上着を脱がせてみるが収まらない。
すると目の前に立っていた女性が話しかけてきた。

「スタイ(よだれかけ)も取ってあげたらどうでしょうか?靴下も脱がせてもいいかもしれませんよ。」

すぐさまアドバイスに従いスタイを外した。
すると魔法にかかったように次男が泣き止んだ。

「どうもありがとうございます!」

礼を言うと彼女自身は子供たちの手がやっと離れてきて、子育てが一段落したところだと教えてくれた。
隣で小説を読んでいた女性にも騒がしくしたことを謝ろうと恐る恐る彼女の方を見る。

「騒がしくしてすいません」という私に
「いえいえ~」と笑顔で首を横に振ってくれた。

女性2人の対応にすっかり心温まった私。
降りるタイミングだったのでせめてものお詫びにと長男にちゃんと挨拶をするよう促すと、
「バイバーイ!!サヨヤナ~」と言いながらぐにゃぐにゃ体をねじらせた。
恥ずかしいお別れとなった。



埼京線

まだ帰宅ラッシュまで時間があるのにそこそこ席が埋まっていた埼京線車内。
席を探しながらさまよっていると、我々を見るなり立ち上がろうとしてくれる何人かの人の姿が視界に入る。中には年配の女性まで。
視線の先にある優先席が空いているのが見えたので礼を言って他の席に座ることを伝える。

優先席は3席。
既に3歳くらいの女の子とその母親が座っていた。
長男を空いている席に座らせると、そこは背もたれのところに窓が無い場所だったので外が見えないと文句を言い始める。
すると隣に座っていた母親が立ち上がり長男に「こっちに座っていいよ」と言い、私にも「どうぞ座ってください」と席を譲ってくれた。

その後、長男は隣に同年代のかわいこちゃんが座っているのが恥ずかしかったのか、私の背中の後ろに入り込んできて結局1人分の席にニホンザルの親子の塊のようになって3人で座った。

電車を降りるかわいこちゃんを見送るときだけは姿勢正しく座って模範的なバイバイをした。



中央線

私たちが座っていると長男の隣に年配の男性が座ってきた。
座席に斜めに座ったり立ち上がろうとしたりする長男に、元気だね~と話しかけた。

男性はこの髪を膨らませた小汚い母親に、何を思ったか彼の身の上話をしてくださった。

九州から19歳のときに上京してきたこと。
その頃は今ではデパートや駅ビルが立ち並ぶ立川にも何もなかったこと。
石原慎太郎と同い年であること。
同い年で認知症の奥様の在宅介護をされていて、奥様が週2日のデイサービスを利用しているときに電車に乗って買い物に出かけること。

医者も奥様を介護施設に入れることを勧めるが、自分が元気な限り在宅介護をしていきたいと言う。

「ずっと一緒に生活してきたからね~」

そう言って窓の外を見つめる男性。

認知症の介護がどれほど過酷かは、認知症だったが数年前に他界した私の祖母を見ていたので少し想像できる。
そして実際はその想像を絶するに違いないのだ。

認知症になっても一緒にいたいと思われている奥様。
こんな美談はドラマにしたって胡散臭いと叩かれそうだよ。




今日は東京で人々の優しさに触れた。

スイスにいたころ東京に子連れで引っ越すのが不安でたまらなかったことを思い出す。
ネット上には都会の人は子連れに冷たいという情報ばかりがはびこっている気がした。



ところで私、埼京線に監視カメラが設置されてるって今日初めて知ったんです。



都会はやっぱり怖いね。
頭でかい主婦には関係ない話だけど。